• Oct
  • 24
  • 2008

『森林はモリやハヤシではない―私の森林論』(四手井 綱英 著)を読んだ

京都府立大学名誉教授、四手井綱英の林学に捧げた一生を描いた本。本書執筆時点で齢95歳。もはや伝記である。

林学のことはせいぜい植林と間伐の表層くらいしか知らないが、この本を読んで多少分かるようになった気がするし、何より森林の見方が変わったと思う。

著者の持論が大部分を占めるが、さすがに説得力があるし、おもしろい。木は農作物と違って何十年、場合によっては100年以上も成長に時間がかかるという点を強調した、現在の植林事業の誤りの指摘などはフムフムと頷かずにはいられない。

植林が環境破壊へ繋がるという衝撃的な話から、趣味の登山の話まで、筆者の人生を丸ごと収めた異色の読み物だ。

目次はこんな感じ。


I 私の森林生態学

森林生態系と林木育種/人工林と天然林/人工植林/糺の森の生態学的意義/秋田スギ林について/砂漠造林への序章/無計画な植林は環境破壊/北限のブナが活気づいていること/孤立したブナ林の復元はあくまで天然更新中心に/森林はモリやハヤシではない/森林と孤立木/林業用種苗の産地問題/小さな誤解/原生林/熱帯雨林/宇宙船地球号の森林生態学



II 私の自然保護と出会った人

自然保護に関して思うこと/自然保護雑感/じゃまなやつは殺せ/子供と環境/都市の自然/京都の自然/文化財としての環境保護/関西空港に関係して/司馬遼太郎さんと鋸,鉋考/上林盛二さんのこと/峰村助治氏(亀さん)と岡田長助氏(岡長さん)のこと/今西錦司さんの生誕100周年と豪雪地帯/二つの銀盃と神社の茅場/私は二度殺された



III 私の里山論

里山について/里山とはどこをさすか/アジアの里山/これからの里山



IV 私の林野庁時代——林業政策および林業経済

林業行政についての意見/私の現業官庁体験/大戦後の林業試験/私の考える林業経済

砂漠造林の話も面白い。砂丘で砂漠への造林の実験をしている間抜けな団体があるらしいが、素人目に見ても失敗するだろうと思える。そんな事がまかり通る造林事業に興味がわいてしまう。

著者の奥さんによるあとがきが感動的な一冊。

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