• May
  • 12
  • 2008

最近読んだ本。その3『闇の守り人』(上橋 菜穂子・著)

ぼちぼち読み始めた、大量に仕入れて読んでなかった本。第3弾。前に読んだ『精霊の守り人』に続くシリーズ第2弾。

主人公バルサは、養父の供養とその汚名を晴らすため、25年ぶりに故郷カンバル王国を訪れる。故郷へと続く洞窟の抜け道の途中「闇の守り人・ヒョウル」に襲われる兄妹を助けるが…。またしても神話と現実の狭間で繰り広げられる命がけの冒険活劇(古。


精霊の守り人と違って少し大人向けになった感じがするのは、あとがきにもある「養父の供養」という“過去と向き合う”という背景と、政治の暗い部分の描かれかたなんかが影響しているんだろうか。実際に『精霊の守り人』よりも、この『闇の守り人』のほうが大人に人気があるそうだ。

『精霊の守り人』もそうだったけれど、テンポ良くスイスイ読めるし、架空の国の文化や神話が生き生きと描かれていて、さすがは作者、文化人類学者というだけある。

文庫版の目次の後には、人物紹介の他に舞台になっている世界の地図と用語解説というのがあって、この用語解説が良い。食べ物などの設定が細かく書かれていて、ファンタジー好きにはたまらない設定集だ。いくつか抜粋してみる。

ルイシャ/青光石。闇の中でみずから青くかがやく、非常に高価な宝石。
/乳、もしくはバター。アクセントでわける。カンバル・ヤギの乳で作る。
ラコルカ/ラ(ヤギの乳)にコルカという茶葉を入れて煮たてる、まろやかなお茶。
ロッソ/芋をつぶした粉をねり、なかにさまざまな具を入れて、カリッと揚げたもの。
ティティ・ラン/〈オコジョを駆る狩人〉。昼は洞窟の中に暮らし、月の美しい夜は山の岩場で狩りをする小人。彼らの狩りをさまたげると、呪われて気がふれるといわれている。
闇の守り人 (上橋 菜穂子・著)新潮文庫 う 18-3/P.13,14 より


ストーリー上重要な意味を持つものはもちろん、「ラ」なんて、それほど重要とは思えないのに、乳とバターの違いをアクセントで使い分けているなんて情報まであるよ。そんなこと言われたら、ちょっと「こんな感じか?ラ?ラァ?ラぁ〜」なんて発音してしまうよ。

ロッソなんてろくすっぽ出てこないけど、この設定のおかげで文章中でも異常に旨そうで、「ラコルカとロッソを一緒に食べたら旨そうだな、ジュル」みたいな妄想をしてしまうことしばしば。

 その香ばしい匂いをかぐと、腹がきゅうっとへってきた。バルサは、早い昼食を食べている商人たちにまじって、甘いユッカの果実入りロッソと、ラガ(チーズ)とひき肉入りのロッソ、それに乳を発酵させたラカール(乳酒)を買って、道ばたにならんでいる露台にすわって食べ始めた。
 揚げたてのロッソの、カリッと香ばしい外側をかむと、口の中に、溶けたラガの味が広がった。
闇の守り人 (上橋 菜穂子・著)新潮文庫 う 18-3/P.69 より


こんな描写はずるい、こっちこそ腹がきゅうっとへってくる。今思いついたけれど、ファンタジーの重要な要素の1つは「食べ物」で間違いないな。なんともお腹がへる一冊。


闇の守り人 (新潮文庫 う 18-3)
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